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暮らしへの影響


■降灰は広範囲に及ぶ

 御嶽山噴火は、マグマに熱せられた地下水が水蒸気となって噴き出した「水蒸気噴火」だった。噴火の種類はほかに、上昇したマグマに接触した地下水や湖水が水蒸気となって爆発する「マグマ水蒸気噴火」、マグマそのものが噴出する「マグマ噴火」がある。

 富士山でも突発的な水蒸気噴火が起きるのか。山梨県富士山科学研究所の常松佳恵研究員(39)によると、山頂付近で30年ほど前まで蒸気を噴出した跡が確認されており、否定はできない。しかし、宝永噴火(1707年)をはじめ、過去の噴火は多くがマグマ噴火。地表近くに熱水がたまっている場所は今はなく、マグマ噴火が起きる可能性が高いとみられる。

 では、マグマ噴火を想定した場合、どんな現象が起き、生活にどう影響するのか。国などでつくる富士山ハザードマップ検討委員会が公表する被害別のシミュレーションがある。

◎木造家屋は倒壊

 これを見ると、県内で最も広範囲に影響が及ぶのが降灰だ。風向きや噴火規模によって範囲は大きく変わるが、宝永噴火と同規模の噴火が起きた場合、県北西部を除く広範囲で2センチ以上、北麓では30センチ以上積もることが予想される。

 火山灰はマグマのかけらが冷えて固まった岩石やガラスの破片。目を傷付け、鼻や気管支など呼吸器への影響が想定される。数ミリ積もっただけで車はスリップし、鉄道などの交通網もまひ。農作物は収穫できず、土に灰が混じるため一定期間作付けが困難になる。屋根に30センチ以上積もればその重さで木造家屋は倒壊する可能性がある。

 「洗い流せばいい」と考えがちだが、火山灰には石こうの成分が含まれ、水と混ざると固まってしまう。排水溝や側溝などに流れると下水管が詰まるため、鹿児島県では雨どいなどを付けていない家が多い。乾燥した状態のままスコップやほうきで専用の袋に集め、各自で「灰捨て場」に持ち込むという。

◎高速で斜面下る

 一方、火口近くの富士山麓で注意が必要なのが、噴石や火砕流、溶岩流、火砕流に伴う融雪型火山泥流だ。

 火砕流は高温の火山灰や火山ガスなどが一体となって高速で斜面を流れ下る現象。規模の大きな噴煙が崩れ落ちたり、溶岩ドームの一部が崩壊したりして起きる。数百度と高温で、速度は時速100キロ以上に達することもある。1991年には長崎・雲仙普賢岳の噴火で大規模火砕流が発生し、消防団員や取材記者ら40人が死亡、3人が行方不明となった。

 積雪時の噴火で火砕流が発生すると、その熱で斜面の雪が解け、大量の水が周辺の岩石や土砂を巻き込みながら、時速60キロ程度の高速で流下する。この「融雪型火山泥流」はあまり知られていないが、短時間で遠距離まで達することがあり、広範囲で甚大な被害が予想される。

 一方、火口から噴出したマグマの「溶岩流」は、粘り気などによるが速度が比較的遅く、人が歩いて避難できる可能性もある。ただ、温度は約1000度。建物や道路、森林などを焼失、埋没させる。

 いずれも富士山火山広域避難計画で、噴火警戒レベルと被害想定エリアに応じた事前避難を必要としている。気象庁が発表する噴火警戒レベルと、自治体の避難指示をしっかり把握し、備えたい。


 【富士山防災 どう備えるか】
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