1つ前のページに戻る

2023.7.07 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / その他 /

富士と力士

 「富士」は日本一を表すとして、力士のしこ名に用いられるケースが多く、歴代の横綱の中では東富士(第40代)、北の富士(第52代)、千代の富士(第58代)、旭富士(第63代)、日馬富士(第70代)、照ノ富士(第73代)の6人。

 かつて「富士」を頭に使うケースは、山梨県出身力士の「専売特許」のようなもの。昭和以降、郷土力士で最初に入幕した富士ケ嶽(のち若港)に端を発する。富士ケ根部屋所属、富士山直下の鳴沢村出身、引退後も富士ケ根親方を名乗り、まさに富士づくし。昭和初期に幕内16場所を務め、最高位は前頭3枚目。当時としては190センチの長身で、つりを得意とした。

 「富士」のしこ名を全国にとどろかせたのが、幕内優勝(1964年7月場所)をした押し相撲の富士錦(甲府市出身)。横綱東富士にスカウトされての入門だった。小結まで昇進した富士錦を慕って山梨から入門する力士が続き、ほとんどが「富士」を用いた(富士晃、富士昇など)。この中で大成したのが富士桜(甲府市出身)。突き押し一筋の相撲ぶりは「突貫小僧」の異名をとり、郷土力士としては最高の関脇まで昇進した。

 直近では2007年に引退した緑富士(中央市出身、後に富士龍に改名)。谷村工高から専大に進み、阿武松部屋に入門した。最高位は幕下筆頭。三段目当時の2002年3月場所では、白鵬(後の第69代横綱)に「つりだし」で勝利。全勝で迎えた優勝決定戦では安馬(後の日馬富士)に敗れたが、2場所連続全勝など活躍した。

 「富士」のしこ名はその後、山梨にとどまらず全国区に。九重部屋や伊勢ケ濱部屋のように部屋の伝統として受け継がれたり、抜きん出た強さや気高さを願って付けたりする傾向があるようだ。2023年7月場所(7月9日初日)では、しこ名に「富士」がつく幕内力士は、横綱照ノ富士(モンゴル)、翠富士(静岡)、錦富士(青森)、北勝富士(埼玉)、宝富士(青森)。照ノ富士は、2015年夏場所後に新大関に昇進したが、怪我や病気のため一時は序二段まで番付を下げた。その後、奇跡的な復活を遂げ、幕内経験者として史上初めて序二段まで降下後の再入幕を果たし、2020年7月場所で平幕(幕尻)優勝。2021年3月場所でも関脇で優勝し、21場所ぶりに大関に返り咲いた。翌5月場所でも優勝。7月場所も14勝1敗の好成績を収め、場所後に第73代横綱に昇進した。

 山梨県甲府市出身の竜電=高田川部屋=が2018年1月場所に新入幕。郷土力士の新入幕は、1988年3月場所の大乃花(笛吹市出身)以来30年ぶり。2019年7月場所には新三役に昇進。郷土力士の新三役は富士桜が1972年9月場所に小結となって以来47年ぶり。2012年11月場所に新十両に昇進したが、場所中の大けがで序ノ口まで番付を落とすも復活。関取(十両以上)経験者が序ノ口に陥落して新三役となるのは、明治以降では初の快挙。

 幕内での成績は以下の通り。

場所 番付 成績 備考
2018 1月 東前頭16枚目 10勝5敗 敢闘賞
3月 西前頭9枚目 8勝7敗
5月 東前頭7枚目 3勝12敗
7月 西前頭15枚目 8勝7敗
9月 東前頭13枚目 10勝5敗
11月 西前頭3枚目 6勝9敗
2019 1月 東前頭7枚目 6勝9敗
3月 東前頭11枚目 10勝5敗
5月 西前頭5枚目 10勝5敗 技能賞
7月 西小結 4勝11敗
9月 西前頭5枚目 7勝8敗
11月 西前頭5枚目 6勝9敗
2020 1月 西前頭8枚目 10勝5敗
3月 東前頭5枚目 6勝9敗
5月 西前頭6枚目 開催中止
7月 西前頭6枚目 7勝8敗
9月 東前頭7枚目 6勝9敗
11月 東前頭10枚目 9勝6敗
2021 1月 東前頭6枚目 4勝11敗
3月 西前頭10枚目 6勝9敗
5月 東前頭14枚目 全  休
2022 9月 西前頭12枚目 11勝4敗
11月 西前頭6枚目 9勝6敗
2023 1月 東前頭5枚目 9勝6敗
3月 西前頭2枚目 2勝13敗
5月 東前頭10枚目 5勝10敗
7月 東前頭15枚目
広告