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富士山世界文化遺産・構成資産『西湖』

 山梨県富士河口湖町。富士講信者にとっては「内八海巡り」で欠かせない修行場だ。かつては精進湖とつながっていて、「せの海」と呼ばれる一つの湖だったが、864(貞観6)年から866(同8)年にかけて起きた「貞観噴火」によって大量に流れ出た溶岩で分断されたとされる。面積は2.12平方キロで富士五湖の中では4番目の大きさだが、最大深度は71.7メートルで2番目に深い(2011年度「山梨の河川」)。

 その深みには、天皇陛下が「奇跡の魚」と表現したクニマスが生息する。秋田県の田沢湖にのみ存在し、一度は「絶滅」種に指定された日本固有の淡水魚が約70年ぶりに見つかり、湖の名前は一躍有名に。その発見は公的に初めて魚類の絶滅指定が見直される契機となり、クニマスは今、本来の生息地以外で存続する「野生絶滅」種となった。

 クニマスが生き続けられた理由は明らかになっていない。ただ湖の周囲は青木ケ原樹海が広がり、富士山麓で最大級の溶岩洞窟「西湖コウモリ穴」など自然の名所も多く、今も神秘的な雰囲気をたたえ続けている。
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