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2002.11.30 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / その他 /

富士山のライチョウ(雷鳥)

 ライチョウは国指定の特別天然記念物で「氷河期の遺留動物」とも言われる鳥。全長約40センチの中型。標高2400メートル以上のハイマツ林帯や岩石帯に生息し、主に植物を餌にしている。羽色は夏はほぼ黄褐色だが、冬は全身が白色になる。南アルプスが生息地の南限とされる。国や県の絶滅危惧種に指定され、2012年には環境省のレッドリストで、絶滅の危険が増している「絶滅危惧2類」から、近い将来に野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧1B類」に見直された。

 この鳥を長野県の白馬岳から、環境と気象条件の同じ富士山に移して保護増殖しよう、という試みがかつてあった。

 1960年8月、白馬山麓から成鳥3羽(オス2羽、メス1羽)、ヒナ4羽(性別不明)が、松本陸上自衛隊にある山岳航空演習隊ののヘリコプターで運ばれ、海抜2000メートルの静岡県側の富士宮口4.5合目へ放鳥された。その後行われた追跡調査により、1963年に富士宮口から12キロも離れた山梨県側の吉田口でも親子連れが見かけられるなど、1964年には10羽、翌1965年には12羽が確認され、繁殖していることがわかった。登山者のカメラにも収まったこともあり、日本野鳥の会本部に“富士山にライチョウが定着”と報告された。

 ところが1969年10月、吉田口登山道に近い泉ケ滝尾根で見かけられたを境に姿を見せなくなった。その後、1970年10月ごろ富士宮口登山道で成鳥2羽を確認した、という情報もあったが、文化庁の依頼で行った山梨県内の動植物生息・植生調査から、1971年5月に県教委が、“富士山にいたライチョウは既に絶滅していた”との結果を発表した。富士山の山肌にはハイマツなどの高山植物が乏しく、タカやキツネなどの外敵から身を隠す場所なく身を守るすべがなかったこと、食べ物が不足しがちだったことなどが絶滅の原因とされている。
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