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2018.6.06 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 6月 /

汚れている富士 米観光誌に失望の記事

 「霊峰富士は、あきカンとゴミクズだらけで山の美しさを汚している」とアメリカの大学教授が富士登山の感想をアメリカの国立公園専門雑誌の「ナショナル・パーク」にのせて日本の観光業者や登山者に警告している。

 この雑誌は国立公園関係の月刊雑誌として米国でも権威のあるものといわれ、投稿者のバージニア大学教授アーモンド・シンガー博士が昨年8月30日登山した記録を今年の2月号にのせ、宿泊先の静岡県須走旅館組合長米山綱雄さんに送ってきたもので、このほど山開きを前に富士吉田市で開かれた富士山五口協議会の席上、同氏から公開され話題になったもの。

 「富士箱根国立公園」というテーマで投稿されたシンガー博士の報告は大要次の通りである。

 ○…私はたった1人で広い太平洋を越えて、あこがれの富士に登ったが、まず感じたことは外人登山客に対する案内施設の不足していることで、バスのキップ売り場で話しても英語はサッパリ通じず、身振り、手まねで大変な苦心をした。バスガイドのマイクを通して聞こえる声はカン高く本当に耳ざわりだった。

 ○…須走口から登り、車を1合目で捨て、山小屋を訪れたが、これでも国立公園の中の施設かと思われるほど不潔で、乱雑だった。富士山は神聖の山だと話を聞いてきたが、登山道や山頂にはカンづめのカンや、あきビン、ワラジ、紙などきたないものがいっぱい散らかっていて驚いた。写真や絵で見た富士は美しかったが、近づいてみてまったく失望してしまった。

 ○…美しかったのは鳥居と頂上にある石室で、自然と人工の美がマッチしていて私を一番喜ばせてくれた。また低い山波が重なり合って無限に消えてゆく景観は忘れることができない。【当時の紙面から】

(1960年6月6日付 山梨日日新聞掲載)
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