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2018.2.04 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 2月 /

富士山2合目県有林 天然木炭見つかる

火山発達史に貴重な資料

 富士吉田市上吉田の富士山2合目県有林内で、天然木炭がほぼ完全な状態で発見された。樹種は針葉樹のトウヒの仲間と考えられ、幹直径75センチ、長さ110センチ。付近の地質から約4000-6000年前の生成と推定される。県や調査に当たった西宮山梨大教授によると、富士北ろくでは初の発見で、富士山の火山発達史、植生の変遷を知る上で貴重な資料になりそうだ。

 天然木炭は昨年12月31日、県有林の伐採材を搬出するための作業道を開削中、作業員が発見した。北富士演習場内で、中ノ茶屋から滝沢林道を約4.5キロ上り、東へ約150メートル入った唐松樹林地。

 地表から約3.7メートル下の黒色スコリア層(火山灰とレキの交じった層)に埋もれていた。発見当時は凍結土に包まれていたため、ほぼ完全な丸太状で発掘でき、皮部分もついていた。現在は県富士ビジターセンターで保管している。

 西宮教授らの調査によると、木炭産出地点から南西約500メートル上に、直径48メートルの富士山の寄生火山(噴火口跡)があり、この火山から噴出物が流出。炭化は噴出物(熱い火山灰など)か地熱によるとみられる。

 噴出年代は、産出層の地質などから4000-6000年前。炭化も同時期とみられるが、今後、炭素法で分析し年代を特定する。年輪は約390年。トウヒは現在も富士山中に自生している。

 西宮教授は「噴火当時の植生や植生変遷を知る手掛かりになり、富士山・寄生火山の噴火の歴史を解き明かす1つのかぎになる」と説明。また直径75センチの大木を完全に炭化させるには、相当長い間、一定温度で加熱する必要があり、炭化のメカニズム解明にも貢献するという。

 天然木炭が発見されるのはまれで、富士山ろくでは過去に静岡県側で例があるだけ。【当時の紙面から】

(1988年2月4日付 山梨日日新聞掲載)
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