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2018.2.22 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 2月 /

富士山有料道路 災害予知へ観測網 県企業局 雲の上の気象、下界で把握へ

 富士山の気象データを分析して道路などの安全対策に役立てようと、富士山有料道路を管理する県企業局が独自の気象観測網の整備に乗り出す。5合目付近で発生した大規模な土石流災害を受け、5合目やその周辺の気象に関するデータを集めて科学的に分析。土石流、雪崩などの危険性をより正確につかむ狙い。データの収集、分析を繰り返して道路の安全性に関するガイドラインをつくり、道路の管理に反映させる。これまで経験や勘に頼ってきた安全性の判断が、データと科学的な分析に裏付けられたものに代わる。

 計画によると、4合目から5合目周辺にかけて数カ所に雨量計や積雪計、温度計などを設置し、気象を常時観測する。現場の天候は〝下界〟でリアルタイムで把握できるようなシステムにする。ここで集めた降雨量、気温、地中温度などのデータを分析、気象条件から道路の安全性を判断する基準を設けるためのマニュアルをつくりたいとしている。年内にも計測機器を設置する方向で準備を進めている。

 県企業局によると、冬季を中心とした富士山有料道路の営業については、同管理事務所の職員が車でパトロールしながら道路のコンディションをチェック。さらに、気温や雲の流れを見ながら判断している。知識や経験に負うところが多かった。

 しかし土石流などは短時間の降雨でも、雨量によって突発的に起きることもある。既に通行している車両に対する警報が間に合わないような事態が生じる恐れがある。

 昨年12月の土石流災害も、パトロールをした直後に発生した。「たまたま人的被害はなかったが、より正確な気象データの必要性を感じた」(山下企業局長)ことなどから、新たな管理基準の策定に着手することとした。

 県企業局は、1月下旬に富士山の雪崩や気象に関する専門家による安全基準検討委員会を発足させた。既に第1回の会合を開き、今回の土石流災害発生の原因やメカニズムなどについて協議した。今後は気象観測の方法、計測機器やデータを集める機械の設置場所など計画の具体化に向けて話し合いを続ける。現在のところ気象データの観測については「当面、5年間ぐらい重ねなければ、明確な判断基準をつくることは難しい」とみている。

 一方、日常的に実施しているパトロールについても強化、充実させる。「どこに重点をおいてパトロールすれば良いか、どのくらいの間隔で必要かなどを検討してもらう」という。

 県企業局は災害の復旧工事に4月から着手する。被害個所の道路はシェルターで防護し、土石流対策を図る。

 山下局長は「工事による安全対策とともに、気象データをもとにした、交通の安全確保策も急ぎたい」と話している。 【当時の紙面から】

(1993年2月22日付 山梨日日新聞掲載)
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