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2018.5.15 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 5月 /

鳴沢に富士山火山博物館 テーマパーク計画スタート

 鳴沢村は富士山の溶岩流上に位置し、樹海や溶岩造形にも恵まれた地域の特性を生かし、富士山の生い立ちや自然、動植物を紹介する富士山火山博物館の建設計画を進めている。博物館と併せ溶岩樹型、溶岩スパイラクル(溶岩水蒸気噴気孔)などを活用した自然探索路も整備、富士山の地下水を引いた「富士山名水コーナー」も設置し、さながら「富士山の小型テーマパーク」といった施設を整える。富士北ろくでは河口湖町の県立富士ビジターセンターに火山噴出物や動物のはく製などが展示されているが、富士山を全般にわたって紹介する施設は珍しい。

 計画地は富士箱根伊豆国立公園特別地域を含み、全域が富士山の側火山長尾山が噴火した際の溶岩流で覆われている。アカマツを中心にアセビ、ミツバツツジなどが生い茂る溶岩樹林帯になっている。

 村が1993年夏、大月短大の田中収教授に依頼し現地の学術調査をした結果、溶岩樹型14カ所、溶岩スパイラクル7カ所、ショーレンドーム(溶岩流内部のガスの圧力によりできた空洞)が多数確認され、既に簡単な表示板も取り付けられている。

 富士山火山博物館は富士山の生い立ち、動植物、ゆう水、溶岩、洞穴、地形、気象など富士山の自然環境にかかわる全般について展示物や模型、映像、音声を使って紹介する。内装は溶岩洞穴をイメージしたものも考えており、テーマパークのようなさまざまなアトラクションも用意する。鉄骨一部二階建て約3000平方メートル。300-500人収容の多目的ホールも併設する。

 探索路は溶岩造形が点在するアカマツなどの森林をそのまま生かしながら、南北100メートル、東西400メートルにわたって散策路を整備する。森林内を散策しながら溶岩樹型、溶岩スパイラクルを間近に観賞できる場をつくる。

 計画は村が本年度から着手した「なるさわクリエーションパーク」整備事業の一環。事業では本年度、地域物産館や駐車場を備えた「道の駅」を整備。物産館はキャベツ、大根など村特産の高原野菜や草花を直売する。博物館や探索路は来年度以降になる。

 クリエーションパークの計画地は約8万7000平方メートル。本年度から3-4年間で完成を目指している。本年度は地域物産館などの建設事業費として5億1500万円を当初予算に計上。全事業費は約20億円の見込みだ。

 富士山を扱った展示施設としては、富士ビジターセンターが溶岩樹型や火山の噴出物、富士山の植物や動物、野生のはく製を展示。富士吉田市立歴史民俗博物館が富士山信仰を紹介している。静岡県側では裾野市立富士山資料館が火山噴出物や図録などの資料、化石を展示している。 【当時の紙面から】

(1994年5月15日付 山梨日日新聞掲載)
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