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2018.8.19 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 8月 /

環境世界一へ第一歩 富士山作戦’96 山梨、静岡結ぶ輪

 美しい富士山を後世に残す第一歩だ-。国、山梨と静岡の両県、「財団法人富士山をきれいにする会」(小林茂理事長)など27団体がスクラムを組み、18日に行った「富士山クリーン作戦96」。参加者らは口々に一斉清掃の意義を語り、参加人数、活動範囲とも過去例をみない”史上最大の作戦”に汗を流した。午後の式典では、環境美化宣言などを通して県境を超えた取り組みの継続と強化を確認した。これまで各自治体や団体単位で行われてきた富士山清掃。国立公園指定60年の記念の年に、行政の枠を取り払ったスクラムは、富士山美化活動の歴史に大きな一歩を記した。

<清掃>
 山梨側の清掃活動には、当初予定を1000人上回る4512人が参加した。県法人会連合会(吉ざわ信一会長)からは、県内4法人会の約500人が参加。甲府・若松町の芸者衆もごみ拾いに一役買った。富士山五合目から六合目にかけては財団法人富士山をきれいにする会を中心に地元各種団体が担当した。

 山頂からは、環境庁や山梨中央銀行の山岳愛好会などが下山しながらごみを拾い集めた。日本ヒマラヤン・アドベンチャー・トラスト(田部井淳子代表)は、午前6時に山頂を出発。お鉢をめぐり、5合目までの登下山道周辺を清掃した。メンバーは「道を外れた草むらなどには、まだたくさんのごみが落ちている。とても拾いきれなかった」と残念そうな表情を見せた。

 山梨側の活動範囲は、富士山のふもとにも拡大。富士五湖周辺や三ツ峠口を、地元市町村の関係者らが巡回してごみを集めた。静岡県側は、予定より約700人多い2934人が参加した。富士宮、御殿場、須走の各登山口を中心に、登山道周辺に重点を置いて清掃した。

<連携>
 主催の富士山地域美化推進会議(日下部甲太郎議長)は、環境庁が音頭を取り、山梨と静岡の両県、関係団体などが力を合わせ、5月に発足。今回の合同清掃は、同会議の初めての具体的な活動として全国的に注目を集めていた。

 行動は県別だったが、富士山をきれいにしようという目的は同じ。富士宮市長で富士山をいつまでも美しくする会の渡辺紀会長は「今後とも山梨、静岡が手を携え、富士山の豊かな自然を守っていきたい」と訴えた。山梨側の参加者からは「活動の輪を広げ、みんなの富士山をみんなの力で守っていこう」と、志を同じくする”隣人”に呼び掛ける声が上がっていた。

<式典>
 午後から富士吉田・富士パインズパークで開かれた式典では、女性として初めてエベレスト登頂に成功した登山家田部井淳子さんが「富士山から世界の山へ」と題して記念講演。「富士山は病んでいる」と訴えた田部井さんは、ごみ投棄の現状を解説しながら「環境保護には、一人ひとりが美化意識を持つことが大事。富士山が(環境)世界一の山になるよう、皆さんの活動に期待している」と激励した。

 同会議の日下部議長の環境美化宣言に対し、会場に集まった2000人近い参加者は大きな拍手で賛同。最後は全員で「富士山」を合唱し、歴史的な清掃活動の幕開けを確認しあった。 【当時の紙面から】

(1996年8月19日付 山梨日日新聞掲載)
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