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2019.11.25 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 11月 /

日本一の富士の景観いつまで…

忍野八海、周辺に民宿や旅館 忍野村、条例で環境保全へ

 日本一の富士山撮影場所としてカメラマンの人気を集めていた忍野村忍草の忍野八海周辺に民宿旅館などの建物が建ち景観が損なわれている。このため村では来年3月の定例議会をメドに村条例で周辺の土地利用を規制することを検討している。付近は私有地のため、果たして環境保全のための規制ができるかどうか、注目されてきた。

 忍野八海は国指定の名勝天然記念物で、湧池を中心に濁池、出口池、お釜池、底抜池、銚子池、菖蒲池、鏡池の8つの湧水(ゆうすい)池から成り立っている。特に湧池から見る富士山の景観が、プロやアマチュアのカメラマンから“最も美しい富士山”として定評がある。訪れる観光客も多いため、同地区では民宿が盛んになってきた。村の調べによると村内の43軒の民宿のうち、3分の2が同地区に集中しており、忍野八海の“恩恵”を受けている。また、旅館も一軒登場している。

 しかし次々と木造や鉄骨の建物が建てられたため昨年ごろから「富士の景観が損なわれている」と問題になっていた。村では「八海付近は、昔から富士山と調和のとれた自然環境で有名。そこに旅館や民宿がどっと進出すると、その環境を壊してしまう。これでは付近の農家が、自分で自分の首を絞めていくようなもの」といい、環境保全のために条例を検討することになったという。

 9月ごろから観光課が中心になって条例制定の準備を進めているが、八海付近は全域が私有地になっており、私有地の取り扱いが問題になってきた。また条例化する場合、八海を中心にどのくらいの地域を規制の対象とするのか、どういう建物なら許可してもいいのかーといった具体的な問題にもぶつかり、当初は12月定例会に提案する予定だったが、提案を来年の3月議会に持ち越した。

 村では「八海付近の住民や、地区の自然を愛する人たちから“もっと早く環境を保全すべきだった”という声が上がっている。一日も早く条例化しなければならない。私有地は農地転用許可や建築許可を取れば建物が建てられるため、地域で公聴会を開いて住民のコンセンサスを得て、このすばらしい景観の環境保全を図りたいと話している。 【当時の紙面から】

(1977年11月25日付 山梨日日新聞掲載)
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