富士講追体験 ツアー開発

昨年度実施したモニターツアーで上吉田地区の街並みについて説明する太田安彦代表理事(中央奥)=富士吉田市内
旅行業者、市など 信仰の歴史守り伝える
富士山麓のツアー事業者や富士山信仰の文化継承を目指す団体、富士吉田市などが連携し、富士講などの登山の在り方を追体験できるガイドツアーの商品化を目指した取り組みを進めている。時代の変化に応じた形で、信仰の山としての歴史を守ろうとの思いが根底にある。関係者らは「祈りの山としての富士山を、一端でも国内外の人に伝えられるようなツアーを考えたい」と意気込む。
ツアー開発に取り組むのは、富士山周辺のツアーを手がける「マウントフジトレイルクラブ」や、信仰文化伝承に取り組む「カノエサル」など。市や専門家、上吉田地区の御師らを交えて、昨年度開発に向けたプロジェクトをスタート。文化庁の補助金も活用して、調査研究のためにモニターツアーを実施してきた。
活動の背景には、登山の大衆化が進み、全国各地の富士講や御師の活動にも陰りが見えている現状への危機感がある。上吉田地区の御師は、最盛期の江戸時代に80~90軒あったが、登山の大衆化が進むにつれて減少し、現在宿泊施設としての機能を備えているのは5軒ほど。ツアー開発には、信仰の対象として世界文化遺産に登録された経緯を踏まえて、その意味を幅広く伝える狙いがある。
現在想定しているのは、富士講登山の追体験などができるツアーだ。ガイド付きで御師文化に触れ、北口本宮冨士浅間神社で祈祷をしてもらい、麓からの登山を楽しむ。夏の開山期以外でも、通年でできるコンテンツもつくる予定。雨具の上に富士講の白装束「行衣」を羽織るなど、時代に応じてスタイルも変える。
2025年度は年5回のモニターツアーやガイド向けの勉強会を予定していて、開山期に入る7月ごろをめどに、試験的なツアーの販売開始を考えている。
(2025年5月8日付 山梨日日新聞掲載)