【ずらっと山梨 富士河口湖町】てくてく再発見
■心落ち着く 穏やかな風景
県内有数の観光地、富士河口湖町。町の中心にある河口湖は、富士山をバックに湖畔を眺められる北岸エリアに多くの人が集まるが、富士急行線河口湖駅や中央自動車道河口湖インターチェンジにほど近い小立、勝山地区の南岸エリアにも魅力的なスポットが点在している。
小立地区の八木崎公園((1))からスタート。広がる芝生には、ボール遊びを楽しむ子どもと親、祖父母の家族やスマートフォンで「自撮り」する若者、犬を連れて仲むつまじく歩く夫婦の姿。穏やかな風景に心が落ち着く。
公園から南東方面に約400メートル歩くと、「ワイン」や「飲茶」の言葉が並ぶ看板が目に入った。ワイン販売とカフェの「三七の広場」((2))だ。1階では県産を中心に約300銘柄の国産ワインを販売。2階のカフェでは、点心と中国茶を楽しめ、グラスワイン(550円)も試飲できる。窓からは均整の取れた富士の絶景も。屋外には屋根付きバーベキュースペースもある。
来た道を戻っていくと、先ほどの公園の南に、かわいらしいメルヘンな建物を見つけた。喫茶店「ミルキーウェイ」は、創業46年目を迎えた老舗で、多くの人に甘美なひとときを与えてきたパフェとクレープの名店だ。
注文が入ってから焼くクレープ生地は、開店当初から変わらない独自の製法で外はさくさく、中はもちもち。好物のバナナチョコクレープ(ハーフサイズ)と飲み物のセット((3)、800円)を注文。甘すぎない生クリームとチョコのバランスに頬が落ちる。
糖分を蓄え、湖畔に沿って西へ。道中、サイクリング客とすれ違う。右手に湖を眺め、爽やかな秋風を浴びると足取りも軽くなる。
勝山地区に入り、1キロほど歩いた先にあるのが、冨士御室浅間神社((4))だ。武田信玄が厚く信仰したことでも知られ、桃山時代の意匠が残る本宮本殿は重要文化財に指定されている。近くの湖畔には「日本武尊が心身を清めた」と伝わる精進場もある。
神社から湖畔沿いに1・5キロほど南西に歩き、最後に地元観光協会が運営する「道の駅かつやま」((5))に立ち寄る。土産物売り場で販売している地区伝統のスズ竹細工は、手作りできめ細かな工芸品で、目当てに訪れる客も多いという。レストランでは、コピーライター糸井重里さんが絶賛する「イトリキカレー」を提供している。
道の駅を出ると、辺りの空があかね色に染まり始めた。夕日が沈む奥河口湖が目に入る。心の中でシャッターが切られた音がした。
(2025年10月17日付 山梨日日新聞掲載)