クニマス産卵動画撮影 県、西湖の湖底30メートルで初 生態解明、成育環境保全へ期待
山梨県は18日、富士河口湖町の西湖に生息するクニマスについて、自然界での産卵行動の動画撮影に初めて成功したと発表した。水深約30メートルの湖底の砂利に産卵し、受精する様子を収めた。県水産技術センターによると、2020年に動画撮影を始めてから、落雷による機器の故障で中断した期間もあったが、今年11月の再開直後に撮影に成功した。今後、ふ化やその後の状況を調査することで生態の解明が進むことが期待される。
センターによると、動画は今月2日午前11時50分ごろに撮影した。水深約30メートルの湖底で、体長30センチ程度の雌が尾びれで砂利にくぼみをつくって産卵した後、体長35~40センチと推定される雄が精子をかける姿を捉えた。サケでよくみられる割り込んで受精を試みる雄の姿も映っていた。
西湖では20年からウナギによる食卵などを監視するため、クニマスの産卵場と推定された地点にカメラ1台を設置。産卵期の冬場に1日6時間程度録画していた。ただ23年に落雷によりカメラなど機材が故障して24年まで撮影できず、修理後の25年11月27日に撮影を再開した。
センターで研究に携わる青柳敏裕研究管理幹によると、クニマスと同じサケ科魚類が河川で産卵する映像記録は数多くある。ただクニマスが産卵する水深30メートル付近の湖底は昼間でも月明かり程度と暗く、水温も約5度で非常に冷たいため、直接観察することは困難だったという。
17年に産卵行動のこま割りの写真撮影は成功したが、動画はなかった。
今後は産卵からふ化後の状況も詳細に観察、調査を続け、西湖での成育環境の保全につなげていく考え。
クニマスは秋田県の田沢湖の水質悪化で1940年ごろに絶滅したと考えられていたが、西湖で2010年に生息が確認された。1935年に田沢湖から移された卵から生まれた個体の子孫が生き延びたとみられている。
(2025年12月19日付 山梨日日新聞掲載)

