2021.3.30

河口湖産ワカサギ“商機”

漁協ブランド化へ企業と連携 来月から外食市場へ出荷

河口湖に仕掛けた定置網からワカサギを水揚げする漁師=河口湖

河口湖に仕掛けた定置網からワカサギを水揚げする漁師=河口湖

 富士河口湖町の河口湖漁協は、河口湖で水揚げされたワカサギのブランド化を目指し、県内企業と連携して販路拡大に乗り出す。4月から業者が県内外の外食市場に鮮魚を出荷。近年の河口湖は成育環境が改善されてワカサギの生息数が増えているとされ、漁協は今年、例年の4倍に当たる2トンを漁獲する方針だ。ブランド化を通じ高齢化が進む漁師の人材確保も狙う。

 漁協と連携してワカサギの出荷を始めるのは、業務用食材卸の甲信食糧(中央市)。定置網漁期間の2月中旬から4月中旬にかけて漁協からワカサギを生きた状態で仕入れ、急速凍結機械で冷凍。4月から鮮度を保ったまま県内外のホテルやレストランに出荷する。

 これまでの出荷先は地元の飲食店などに限られ、例年の漁獲量は500キロほどにとどまっていた。昨年から別の業者を通じて県内スーパーで販売を始めたが、外食市場に流通させることで特産物としての価値や発信力をさらに高める。甲信食糧はインターネット通販で個人向けに販売するほか、学校給食での提供も検討する。

 河口湖はかつてワカサギの一大産地だったが、1980年代半ばから断続的に不漁が続き、漁協の中心的な収入源は外来種のブラックバスに移行した。漁協はワカサギの販路拡大を図ろうと、5年ほど前から自家採卵するなどして個体数を増やす取り組みを進めてきた。

 漁協が毎年7月に実施している地引き網調査によると、近年は1回で平均約30キロの漁獲があり、「稚魚の餌不足などの問題が解消されて個体数は安定している」(担当者)。遊漁期間中はドーム船やボートからの釣り客も目立つようになった。

 一方、ワカサギ漁師は全盛期の3分の1ほどの9人まで減少し、年齢も50~80代と高齢化が進んでいる。漁協の小林真組合長は「河口湖のワカサギは身が柔らかくておいしく、地域の誇り。ブランド化で興味を持ってくれる人が増え、若い漁師の増加につながってほしい」と期待している。

 県食糧花き水産課の担当者は漁協の取り組みについて「ワカサギの流通量が増え、産地としての河口湖を発信してほしい」と話している。

(2021年3月28日付 山梨日日新聞掲載)

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