山開き 富士登山、万全の装備で レンジャー 軽装者に指導

開山前に行った予行演習で軽装の登山者役に指導する富士山レンジャー(右)。今夏から権限が強化され、強い指導ができるようになった=富士山5合目

富士吉田市などの協議会が運営する6合目安全指導センター。安全確保のため、ヘルメットも貸し出している
富士山は1日、山開きを迎えた。安全で安心な登山を楽しんでもらうため、これまで山梨県や地元の富士吉田市は啓発を続けてきた。リスクが高い夜通しの「弾丸登山」は、県の入山規制で大幅に解消されたが、依然として準備が不十分な登山者は一定数いる。開山に当たり、国内最高峰の富士山に臨む心構えを改めて紹介するとともに、山を知り尽くした富士山の案内人に魅力と注意点を聞いた。
富士山で長年課題となっているのが装備が甘い軽装登山だ。県は今夏、富士山レンジャーを県の任期付きの正規職員として、軽装登山者への指導権限を強化。場合によっては、入山を拒否できるようにした。
環境省と山梨・静岡両県が開設する富士登山オフィシャルサイトは、富士登山に必要な装備を紹介している。サイトでは、雨具、靴、防寒着、ヘッドライトなどの用意を求める。雨具は上下で分かれていることが重要で、登山靴は「底が硬いハイカットのもの」を求めている。
標高が高いため、5合目と山頂での気温差は激しく、昼間で9度、夜間では13度以上になるため、天候や気温に柔軟に対応できる服装の準備も必要。落石や噴火のリスクもあるため、ヘルメットも用意を。無い場合は富士吉田市などが運営する6合目安全指導センターで貸し出している。高山病や熱中症対策に飲料水も欠かせない。
富士山のガイドらでつくる富士吉田市案内人組合の堀内由彦副組合長は「飲料水は500ミリリットルのペットボトル2本で入山してほしい」と語る。少ない気もするが、荷物量を抑える工夫だ。「最初から何リットルも持っていると、それだけでリュックサックが重くなり、体への負担につながる。水は道中、山小屋で買い足すつもりで登ってほしい」と呼びかける。
同組合所属の女性ガイド池敏子さんは「実際に荷物を入れたリュックや靴を着けて、登山前に試し歩きして」と指摘する。自分の体力を知ることが大事といい、「装備はもちろん、心と体の準備も怠らないこと。『楽しかったね』で終えられれば、富士登山は大成功」と話す。
(2025年7月2日付 山梨日日新聞掲載)